​第 9 回 大 会

東京宣言・2021

行動する
アジアの宗教コミュニティー

前  文

 

2019年以降、人類のあらゆる活動領域に悪影響を与えているCOVID-19のパンデミックは、依然として地球市民に対する厳しく致命的な挑戦となっている。多くの信仰コミュニティの人々もまたその影響を免れない。COVID-19ウィルスにより、教会、寺院、モスクやその他の礼拝所に集まることができなくなり、重要な儀式や信仰の伝統を実践する方法の変更が余儀なくされている。

 

RfPアジアとも称されるアジア宗教者平和会議(ACRP)の第9回大会(これ以降東京大会と称する)は、当初、2020年10月に日本の東京で開催され、1970年に日本の京都で開催された世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)第1回世界大会の50周年を記念する予定であった。この会議はCOVID-19の影響で1年遅れたが、この遅れは決して後退ではなかった。ACRPのビジョンと使命に共感する私たちは、この延期が、現場での具体的な行動を遂行するために私たちの決意とコミットメントを再確認する貴重な機会となったことを確信している。

 

東京大会は、2021年10月17日から22日まで東京を中心舞台として、『行動するアジアの宗教コミュニティ:誰一人取り残さない、健やかで豊かなアジアの平和をめざして』というテーマのもと、初めてオンラインで開催された。今回、WCRP/ RfP日本委員会が初めて主催した東京大会には、アジア太平洋地域の21カ国から6日間にわたり、さまざまな宗教コミュニティを代表する正式代表者を含む約1500人が参加した。ACRPは、東京大会の開催に協力をいただいた開催国の委員会に深く感謝する。

東京大会では、管理総会(代表者124名)と執行委員会(代表者47名)を中心とした、全面的に刷新された定款が承認され、新たに諮問委員会とアジア・トラスティーズの2つの組織が追加された。また、東ティモールの暫定加盟が承認され、21カ国に加えて、最も新しい加盟国となった。21カ国は、オーストラリア、バングラデシュ、カンボジア、中国、インド、インドネシア、イラク、日本、朝鮮民主主義人民共和国、大韓民国、キルギス、マレーシア、モンゴル、ミャンマー、ネパール、ニュージーランド、パキスタン、フィリピン、シンガポール、スリランカ、タイであり、世界の人口の52%を占めている。

アジアにおける我々の挑戦

 

「21世紀はアジアの世紀」と呼ばれるものの、アジアは依然として平和ではなく、アジア諸国とその少数者間の更なる和解のための真の努力が必要である。アジアの人々は、現在も進行している軍拡競争と、核兵器がもたらす世界的な脅威に深刻な懸念を抱いている。朝鮮半島は、第二次世界大戦の最後の残像として、いまだに分断状況にある。国家内、国家間の紛争や対立は、アジアの多くの地域で見られる。東京大会の参加者は、アジア太平洋地域における紛争や流血を懸念している。

 

アジアでは明らかな経済成長が達成されているものの、多くの国々が経済不況や貧弱なガバナンスに苦しんでおり、その状況下で貧富の差が拡大している。アジアでは、無生物、有生物を問わず、あらゆる形態の生命(いのち)の尊厳が侵害されているため、あらゆる形態の生命(いのち)の尊厳に対する意識を高める教育が強く求められている。人権が侵害されている人々の声を明確に聞くべきである。人身取引、児童労働、児童婚や他の慣習的に行われている間違った行動は、ジェンダーの不平等をもたらし、人間の尊厳を侵害している。アジアでは、宗教、民族、文化の多様性が危機にさらされ、宗教的、政治的、民族的過激主義によってさらに悪化している。アジアでは、生命(いのち)の尊厳への新たな攻撃となる環境の悪化が広がっている。気候変動は現在、気候「危機」と表現されていて、人類の生存と発展に厳しい課題を突きつけている。すべての国が気候危機の犠牲になっている。

我々のアジアへの再確認

 

東京大会は、集中的な議論を経て、豊かな宗教的・文化的遺産を持つアジアが、前述の課題とさらには脅威に立ち向かう準備ができていることを確認した。アジアの人々は、違いや多様性を深く尊重し、多元的な考え方を十分に大切にし、我々の中に家族のような感覚を共有していることに気づくこととなった。そして、人間の心に共鳴を呼び起こし、お互いに分かち合い、思いやることで一つになろうとするアジアの霊性を誇りに思っている。このため、アジアの美しさは、人間関係や自然との共存において、慈悲心、忍耐力、寛容さ、一体感、包容力といった言葉に象徴される。

 

東京大会は、ACRPを具体的な行動へと進化させる歴史的な転機となった。それに加え、東京大会は、1)人身取引、2)あらゆる生命(いのち)の尊厳に関する教育、3)紛争の解決と和解、4)開発と環境、5)青年のリーダーシップの向上、などの優先プロジェクトで構成されるACRPのフラッグシップ・プロジェクトを紹介する場にもなった。ACRPの献身的なメンバーが語る成功物語や困難な経験談は、大会参加者に対して、我々のアジアを、すべての人々にとって、より包括的で、健全で、豊かで平和な居住地へと変革することを提唱するモチベーションを与えた。私たちはまた、様々なプログラムやプロジェクトの実施に向けて、言葉だけではなく、行動していくべきであることを確信した。

 

振り返ってみると、東京大会の準備は、2015年に国連で採択されて広く知られている「持続可能な開発目標(SDGs)」に由来する1つの重要な原則から始まった。それは、‟誰一人取り残さない。”である。 ‟包摂的”という言葉は、この原則に由来する4つの分科会のサブテーマに含まれている。東京大会では、基調講演や全体会議、分科会での議論が建設的に活かされ、より良いアジアに貢献するための原動力となる方法や手段が示される場となった。

 

4つの分科会のテーマは、(a)平和と人間の尊厳のための教育、(b)弱者のための人権と福祉、(c)朝鮮半島とミャンマーの状況を踏まえた社会的一致のための和解、(d)多様化する社会における開発と環境、である。アフガニスタンについてのセッションは会議直前で遅れて準備され、同国に留まっている日本のNGO関係者からの情報をもとに議論した。

 

我々、東京大会の参加者は、ACRPが地域、国、地方レベルで平和のために活動している多宗教間組織であること、平和、宗教的調和、コミュニティの結束のために、アジア太平洋地域の信仰の伝統や宗教コミュニティの間での共通行動を促進していることをここに再確認する。これがACRPの特徴である。ACRPの活動を通じて、アジアの多様な宗教コミュニティは、あらゆる生命(いのち)の尊厳の促進、公正で調和のとれた社会の構築、持続可能な開発目標の推進により、平和と和解をはじめ「深く浸透し、広く共有された」道徳的価値を見出している。ACRPは、このような精神的・道徳的な理想を具体的な行動に移していきたいと考えている。アジア各地の宗教コミュニティのメンバーとして、我々は、草の根での共同体への取り組み、霊性的・倫理的・宗教的な境界を越えて働く能力に基づいて、アジアにおける平和の促進と実現に比類のない貢献をしている。

女性事前大会では、女性は変化の担い手であるが、ジェンダー不平等、経済的不公正、人権侵害などの課題に直面していることが強調された。これらの課題を克服するための具体的なステップとして、男女全てにジェンダーの権利に関する教育を行い、社会や政府のすべての階層で正義に対する意識の向上と能力開発を行うことが挙げられた。ここには、ソーシャルメディア・プラットフォームの規制された使用も含まれている。

 

ACRPは、我々が直面している問題に対処する上で若者が果たす重要な役割を評価するとともに、彼らが我々のミッションの重要なパートナーであると考えている。我々は、継続して若者を励まし、力を与え、我々の活動に参加してもらうことを約束する。我々は、若者が参加するためのプラットフォームを作り、彼らのプロジェクトやプログラムをサポートすることを約束する。

 

東京大会は、これまでの具体的な活動の成果を再確認する場であることを踏まえ、フラッグシップ・プロジェクト、COVID-19、アジアの宗教コミュニティについて、ひらめきに満ちた意見交換を行った。例えば、我々の活動の背景には我々のアジアの霊性が存在している。何時パラダイムシフトが起きても、信仰コミュニティの人々は弱者や傷ついた人たちに適切な支援を行うため、その変化に対応することができる。また、アフガニスタン、ミャンマー及び2つのコリアのように困難を抱える国で生活している人々の声を聞き、それにより、これらの国々での人道支援の実施に向けた努力を強化することを再確認した。

 

アジアにおける我々の共通の行動への呼びかけ

 

全体会議や分科会での集中的な議論を経て、非常に有益で実効的な提言が提出された。ACRPとその22の各国委員会の

メンバーである我々は、以下の提言を実行することをここに決意する。

提言1:我々は、ACRP のフラッグシップ・プロジェクトである、1) あらゆる生命(いのち)の尊厳に関する意識向

       上、2) 人身取引防止、3) 平和構築と和解、4) 環境保護、5) 青年リーダー育成、を宗教間の対話と協力を

       通じて推進、提唱、実施する。

提言2: 我々は、ACRP の新行動計画に明記されるプログラム、プロジェクト、活動、を宗教間の対話と協力を通じ

        て、全面的に確約・実施する。

提言3: 我々は、フラッグシップ・プロジェクトと他のプロジェクトを遂行するための資金を調達し、今後設立される

        アジア・トラスティーズを活用する。

提言4: アジア・太平洋地域の宗教指導者たちは、「すべての人が安全になるまで、誰も安全ではない」という理由に

        より、希望すれば誰でもワクチン接種を受けることができることを、共通の利益として自分たちのコミュニ

        ティに奨励する。また、彼らとそのコミュニティは、特に貧しい国々でCOVID-19ウイルスのさらなる蔓延を

        防ぐため、WCRPと協力して、ワクチンとその製造の公正で正当な分配を提唱し、推進する。

提言5: 我々は、若者が未来への「希望」であると同時に現在の「希望」でもあることから、あらゆるレベルの意思決

        定プロセスに若者のメンバーを参加させる。

提言6: 我々は、女性が男性と互いに補完し合い変化をもたらす者として、全てのレベルの意思決定プロセスに男性と

        共に参加させる。

提言7: 我々は、韓国宗教人平和会議(KCRP)と協力し、朝鮮宗教人協議会(KCR)を通じて、朝鮮民主主義人民共和

        国の人々のために人道的な活動を行う。2つのコリア間の平和条約締結のためのプロセスを推進する。朝鮮半

        島の平和を達成するために、平和教育を提唱する。

提言8: 我々は、犠牲者や疎外された人々が叫びを上げているアフガニスタン及びミャンマーなどの国々のために、平

        和構築と和解のために努力する。我々は、深い悲しみと荒廃の中にあるこれらの国々の人々が平和、和解、

        社会的結束を実現するために祈り、行動し、関与を続ける。

提言9: 我々は、核兵器廃絶のための活動や、原子力の平和利用に関する賛否両論の議論に参加し、防衛予算を平和関

        連活動推進のための資金に転換することを提唱する。

提言10: 我々は、政府、国際機関、宗教コミュニティと共に、包括性、一体性、環境保護に関する平和的対話を提唱

         し、平和に関するビデオ、ポジションペーパーの発表、集会、祈り、会議、セミナー、ウェビナーなどの

         ソーシャルメディアを積極的に活用する。

提言11: 我々は、SDGsに沿ってグローバルなネットワークを構築・参加することにより、連帯、協力を促進し、優良

         事例を共有する。

提言12: 我々は、宗教間の対話と協力を積極的に行い、宗教コミュニティの社会的責任を再認識する。

         そして、平等、尊敬、包括性、相互学習の精神を提唱する。ACRPの原則と戦略的行動を実行するために

         具体的な行動をとり、かつ平和教育と環境教育の連携を念頭に入れ、気候変動に共同で対処するために合意

         する。そして環境を保護し、健全な生態環境を作る。地球上のすべての生命(いのち)の共同体を共同で

         構築し、クリーンな世界を将来の世代に残す。

これらの提言は、WCRPの6つの戦略的目標、(1)平和で公正かつ包括的な社会の促進 (2)ジェンダー平等の推進 (3)持続可能な環境の育成 (4)思想・良心・宗教の自由の擁護 (5)宗教間教育の強化 (6)多宗教間協力とグローバル・パートナーシップの促進、に合致している。

 

ACRP は、今後 5 年間の ACRP フラッグシップ・プロジェクトの実施とそのためのACRP事務局の支援のため、WCRP/RfP日本委員会から 30,000,000 円(約273,000USD)の寛大な寄付をいただいたことに感謝する。

 

 

 

ACRP第9回大会により採択。

2021年10月22日